カーナビを自分で買うにあたり、必要な部品や適合情報などを調べる作業が最も肝であり、かつ大変なことです。だけど、そもそも調査方法すら全然知られておらず、結局お店に持ち込まざるを得ない…。
しかし。
実は一般にはほとんど知られていませんが、カー用品店の店員さんが使うのとほぼ同じような情報を僕ら一般人でもインターネットで閲覧できるものが存在しています。
それは「BEST KIT」と「JUST FIT」というもの。
今回はこれらの概要と利用方法について詳しく説明します。カーナビを自分で購入したいと思っている方には必見の情報です。
この記事で分かること
この記事で分かることを先にまとめておきます。
「適合情報サイト(BEST KITやJUST FITのこと)」の使い方が分かるようになることで、主にネットなどカーナビを自分で購入する場合に本体以外の必要なもの、注意すべきことなどが全て分かるようになる
です。
カーナビは選ぶのもさることながら、「取り付けも自分でやるのは難しそうだし、他になにが必要かすら見当もつかない」など、自分での購入の難易度はかなり高いです。
これらを現実的に解決してくれる方法として、今回の記事を用意してみました。
分からない点や具体的な取り付けへの質問などはいつでも受け付けております。お気軽にコメントください。
「BEST KIT」と「JUST FIT」とは?
この
- BEST KIT
- JUST FIT
という2つは、もともとカー用品店で店員さんも使う適合情報などを調べる本で、要はプロ仕様のものです。
僕はカーナビの販売経験がありますので、実際にこれらを使って何十人ものお客さんの車に幾種類ものカーナビを提案してきました。
パターンや環境もピンきりですがこういった情報があるから商業利用でも困らないのです。
で、この本というか事典自体は非売品ですので僕らが手軽に手に入れることはできませんが、全く同じ情報をネットで見ることができるようにもなっています。
リンクはこちら。
今回着目するのはここ。
これを利用すれば、お店で専門のスタッフさんに相談するのと同じクオリティの情報が手軽に手に入れられるということです。
もちろんバッチリ使いこなせることが前提だけど…。
両者の違いは?
両者の違いについても少しお話を。
- BEST KITは日東工業株式会社
- JUST FITはパイオニア株式会社
がそれぞれ運営しています。
日東工業は取り付けキットやその他接続ケーブルの開発・販売を行っており、この界隈では大切な会社です。
パイオニアはご存知カロッツェリアのカーナビを製作しているメーカーで、その購入手助けとしてこういったツールを自社提供しています。
主な使い分け基準ですが、
- パイオニアのナビを買うとき
- 7インチワイド(幅200mm)のナビを付けるとき(もしくはそれ以上のサイズのナビを付けるとき)
などはJUST FITを使うべきで、それ以外の場合はBEST KITで情報を補填するのが基本です。
また、言うまでもなく「NITTO(日東工業)系の取り付けキット類」について調べたいときはBEST KIT、「カロッツェリア系の取り付けキット類」について調べたいときはJUST FITが良いでしょう。
カーナビのサイズについては「自分の車には何インチが付く?」カーナビのサイズ/大きさの違いまとめの記事をご覧ください。ここら辺の知識はそれなりに理解ができていることが前提じゃないと利用は難しいです。
使い方
ではメインコンテンツです。今回は実際に自分の車にカーナビを取り付けるつもりになって一緒に使い方を辿っていくことにしましょう。
ここではまずオーソドックスなパターンで使い方自体を覚えていくこととし、それから数回は違うパターンで調べる「練習問題のようなもの」も用意しています。
カーナビまわりは「例外はつきもの」どころか「例外しかない」勢いなので、こういった調査は非常に大事です。
もし「なんでこんなことしなきゃなんねーんだ!!」と少しでも思うのなら、潔くお店に行って全部おまかせするのが良いと思います。
また、番外編として「取り付けキット」の同梱内容物を調べる方法もお伝えします。
「トヨタの現行アクア(新車)に7インチワイドサイズの社外品ナビを付けたい」という目的にしてみる
あえてプリウスを避けたのは上級国民からの圧迫も鑑みてのこと
トヨタ車は「利用者数が最も多い」ということ以外に、「取り付け事情的にも分かりやすく汎用的である」というケースが多いのでシンプルなパターンの紹介にはもってこいです。
1つずつ順番を追って進めていきましょう。
1.該当車種のページを探す
まずはカーナビを取り付けたい自分の車を探します。
以下、それぞれBEST KITの手順を先に、JUST FITの手順はその後に順番に並べています
◆BEST KIT
◆JUST FIT
途中で年式を訊かれますが、超重要です。
「あやふやだから適当でいいや」は絶対だめです。1つMC(マイナーチェンジ)してモデルが変わるだけで事情が一変するケースは少なくないです。
「年式」とともに自分の車の「型式」は覚えておいた方が無難です。これらは車検証から調べるのが確実です。
年式は「初度登録年月」の欄を見ます。
型式は、場合によっては次のステップでも使います。
2.「型式」と「窓口」で今回の条件に見合う情報を絞り込む
年式で該当車種のモデルを絞ったらこんな風になっていると思います。
この表のどれか1行が(場合によっては複数行見ます)今回欲しい情報です。
絞り込むポイントは2つ。
- 型式 : 車のモデルを一意に定めるIDのようなもの
- 窓口 : ナビが収まる場所(下図参照)の状態がどうなっているか
です。今回は型式で既に絞れているので、着目するのは「窓口」の方になります。BEST KITなど適合情報サイト上では「ナビ・オーディオのサイズ」「取付商品のサイズ」などと書かれています。
窓口とは
ここのことで、「DINポケット」などとも呼ばれます。カーナビやオーディオが入るべき「穴」のような場所で、なにも付いていない場合は下図のようにすっからかんになっています。
この状態を「オーディオレス」と呼びます。
戻りましょう。
表を見ると、「型式」が左から2つ目に、表の中央あたりに「取付商品のサイズ」があるのが分かります。
「2D」「W2D」「180mm」「200mm」などと書いてあるのがそれのことです。以下簡潔にまとめます。
2D 180mm |
「7インチ」と呼ばれる最もオーソドックスなサイズのナビ。基本的にDINポケットがある全ての車に対応しています。 |
W2D 200mm |
「7インチワイド」などと呼ばれる、通常の7インチナビより横幅が2cmだけ大きいナビ。ホンダ/マツダ/三菱では対応しておらず、トヨタ/ダイハツ系列は多くが対応、その他は車種による、といった感じです。 |
8型、9型など | 7インチ系より大きい特殊なナビ。これは車種ごとに個別の対応がされていないと全く付かないナビです。最近は8型(8インチと同義)が流行ってきています。 |
大変ややこしいカーナビのサイズ事情ですが、ここが分からないと先へ進めません。「自分の車には何インチが付く?」カーナビのサイズ/大きさの違いまとめの記事でも詳しく解説しているので、はっきりさせておきましょう。
もし調べている表に「W2D」や「200mm」の表記がない場合は、「その車種には7インチワイドモデルはつかない」ということです。
というわけで、今回検討しているアクアは「新車、つまりオーディオレス車、そして取り付けたいナビは7インチワイドサイズ」なので無事に行が絞れました。
後述しますが、「新車時と社外品ナビが既に付いている状態」は「オーディオレス」の欄を見るべきで、メーカーオプションやディーラーオプションのナビがついている場合はそれぞれ「M.OP」や「D.OP」などを見ればOKです。
M.OPやD.OPなどについては下記記事で解説しています。
3.必要な物品を調べる
ここまで来てようやっと、取り付けに必要なケーブルや取り付けキットについての情報が得られます。
赤枠で囲った部分が取り付けキットに関する情報です。この取り付けキットの型番から内容物を調べることが可能というわけ。
基本的にこの取り付けキットのみ(と注意事項に記載の物品)を購入すれば取り付けに必要なものは全て揃いますが、キット内に含まれているケーブルなどを単品で購入することによりさらにコスト削減が可能です。
実はこれらの適合情報サイトを使って本当に調べたいことは取り付けキットの型番ではなく、それらに含まれるハーネスのピン数などなんです。そういう意味で両者を同時に使っていきます。
ただしここはかなり難易度が高いので別記事に譲ることとします。
基本的な使い方としては、まずは取り付けキットの型番が分かればOKです。
4.注意事項を「全て」読む
最後です。どうでもいいところと思われがちですが、下手したら最も大事なステップです。
注意事項とはこういった場所のことを言っています。「注◯」に相当する数字の部分を下から探して読みます。
小さい字だらけで読む気も起きないところですが、実際には必要な物品が変動したり「そもそも◯◯の状況では取り付け不可です」みたいなことが普通に書いてあるので、必ず全てをチェックしなければなりません。
例えば以下。
「ディーラーオプションナビがついている場合は標準的なサイズのナビは取り付けできません」と書いてあります(まあこれは普通のことなんですが…)。
あとは、
ステアリングリモコンスイッチ(通称ステリモ)との接続に関することも大抵ここに書いてあります。だいたい必要なケーブルも車メーカーとの組み合わせによってほぼ確定的です。
ステリモスイッチとはハンドルのボタン類のこと。
こういうやつ。これを付け替えたカーナビでも継続使用するために必要なケーブルがあります。
その他カーナビとの接続でどういうものが必要になるのかは下記記事を参照してください。
ここの注意事項を全て読み終わって問題がなさそうであることを確認できたら、作業は一通り完了です。
お疲れ様でした。
別パターン①
ここからは同じ手順に沿って別の取り付けパターンを追ってみることとします。
ホンダのフィットに付いているディーラーオプションナビ(8インチ)を社外品ナビ(8インチ)に付け替える
としてみましょう。
1.該当ページを探す
- ホンダ
- フィット(現行最新モデル)
で探していきましょう。7インチワイド以上のサイズのナビなので、JUST FITを確認してみます。
「装着シミュレーション」ではなく「フィッティングガイド」の方です。
ここは問題ないですね。
2.参照すべき行を絞る
今回目的とする情報がどこかを絞ります。
「ディーラーオプションのナビが付いている状態」なので、「D.OPの8インチナビ付車」の欄を見ればOK。
「取付商品のサイズ」が「8型」になっているのが確認できますが、これはもともとのディーラーオプションナビが8インチだから付け替える社外品ナビも8インチにしましょうねという暗黙の流れということです。
これ以下のサイズ(7インチや7インチワイド)も事実上取付可能ですが、最近は各社8インチのナビも急増してますので素直に画面が大きい方を選んだ方がベターです。言うまでもなく8インチより大きいのは取り付け不能です(削るなどの魔改造は除く)。
3.必要なものを調べる
取り付けキットの型番などを確認していきましょう。
「KLS-H801D」とありますね。一応これの中身も見ておきましょう。
また、この行の取り付けキットだけ値段が高いことに気が付いていると思いますがこれには理由があります。
「オーディオレス車」、つまり空っぽの状態なら車と繋ぐものはなにもないので車側の配線と直接繋げやすいのですが、純正系(D.OP/M.OP)と一度接続していた経験があるとカプラーの形状が変わってしまったり色々と環境が変わってしまうので、その変換に手間がかかるからです。
まあ、技術的になにかが変わっているようには特に見えないですし、少し足元見られている気もしなくはないですね…。
4.注意事項を全て読む
該当する行にある注意事項を読みます。
今回該当しているのは2、4、5、6、10。
ポイントは5と6で、ここはステリモのことを言っています。取り付けキットの中身だけで純正のステリモスイッチが使えるということが分かりますね。
また、このマークはステアリングリモコンのボタンを示していて、一応対応するケーブルがあるよという意味合いです(このマークだけの信用は禁物)。
10番はバックカメラの話なので今回は除外です。
※バックカメラまわりはさらにややこしいので、記事にするかどうかも迷い中です…。
以上でこのパターンは終了ですね。
別パターン②
もうひとつ別パターン、最後です。
スズキのスペーシアに付いている7インチナビを7インチワイドのナビに付け替える
「社外品ナビの買い替え」ということで、これもよくあるケースですね。ただしちょっとポイントなのが、ナビのインチアップをしているという点。
さっきは「この記事では説明は控える」と言った、「取り付けキット自体は買わずにケーブルだけ単品購入で済ませる」というのの紹介も軽く含めて説明してみます。
1.該当ページを探す
- スズキ
- スペーシア(現行最新モデル)
で探します。
◆BEST KIT
◆JUST FIT
ありました。
2.参照すべき行を絞る
情報を絞ります。
「今ついているナビは7インチ」の設定ですが、見るべき窓口は「ワイド2D/200mm」で大丈夫です(というかそれしかない)。
今回付けたいナビは7インチワイドですので、「W2D」の表示を参照しましょう。
ここまではいいですね。
3.必要なものを調べる
ここから本題、取り付けキットの型番などの確認です。
該当する取り付けキットの型番はすぐに分かりますが、今回はその横にある「接続ハーネスのピン数」にも着目してみましょう。
それぞれ20ピンと5ピンのケーブルが含まれていそうです。一応取り付けキットの中身写真も見ておきましょう。
たしかにそれっぽいハーネスが2つ確認できます。「20P」と「5P」も書いてありますね。
で、
今回のケースである「社外品ナビから社外品ナビの買い替え」ですが、「今まで社外品ナビが付いていた」ということは、この2つのケーブルと同じものは既に車に付いているということがご理解いただけますでしょうか。
つまり極論は、社外品ナビの買い替えだけならなにも買う必要はないんです(言うまでもなく例外はあり)。
上記は7インチ通常サイズである「2D」の方のそれぞれの取り付けキットですが、含まれているハーネス自体は同じ物っぽいことが分かります。
で、しかも今回は「サイズアップ」ですので、今まで付けていた化粧パネル類も取り外すだけでOKです。
今回はブラケットも要らなそうなので、本当になにも買わなくてもナビの付け替えが完了しそうですね。
「中にはこういうパターンもある」という紹介にて、今回は一旦ここで切らせてもらいます。
4.注意事項を全て読む
あとはいつも通り、該当する行にある注意事項を読みます。
今回は特筆して注意して欲しいことはありませんので割愛します。
※読まなくていいという意味ではありません。必ず読んだ上で判断してください。
以上で、標準的な使い方の説明とそのパターン別練習は終わりです。
番外編:取り付けキットについて調べる
最後に、BEST KITやJUST FITで参照できる情報として「取り付けキットの中身などについて調べる」ということも紹介しておきます。
JUST FITに記載のパイオニア製取り付けキットはともかく、日東製のキットはググっても情報はほぼヒットしないので、その調査のためにこれらを用いることになります。
◆BEST KIT
◆JUST FIT
各ページとも「検索」や「索引」機能を使えばすぐに目的の情報へ辿り着けます。
記載してあるのは内容物の写真とそのテキスト情報ですが、これが役に立つことが結構あります。
なるべく合計金額を安く済ませたいときに、取り付けキットと単品購入を上手く組み合わせて「ダブリ/抜け」なく揃えるには内容物の確認は不可欠だからです。
以下用語の簡単な説明もまとめておきます。
名称 | 記載サイト | 説明 |
ブラケット | 両方 | カーナビを車体に取り付けるために物理的に必要になる金具のこと。ネジを使ってナビに装着して、それを車の窓口にガチャっとやるイメージ。 |
パネル/化粧パネル/スペースパネル | 両方 | ナビのディスプレイが位置することになる「まわり」に、取り付けたときに隙間などができてしまう場合にそれを埋めるもの。「7インチワイドモデルに7インチ通常サイズのナビを付けるときなどに使う」と思うと想像しやすいと思います。 |
ダイレクト接続ハーネス | JUST FIT | 「取り付けキット」の意味という理解でほとんどよく、車から伸びている配線とナビ側の電源も含めて(ほぼ)全てこれ1つでOKなときに使われる。 |
10P/6Pなど、 「数字+P」の意味 |
両方 |
これはコネクタ(カプラー)のピン数を表していて、だいたいピン数と車のメーカーでなんのケーブルなのかが分かります。例えばトヨタなら10P/6Pはメインの接続ハーネスで、5Pは車速取り出し用のケーブルです。 |
あとがき
以上で説明は終了です。
文字ベースだけでこういう内容を伝えるのはとても難しいし、色々試行錯誤してこういう形態にしたんですけど、どうだったでしょう。
「取り付けはともかくカーナビの購入だけは自分でやりたい!」という人を応援するブログなので、今回の内容は絶対に避けては通れない部分でした。
少しは伝わっているといいんですが、いかんせんカーナビの取付事情はクソなので、ちんぷんかんぷんの方が多いと思います。というか、「なんとなく言いたいことは分かるけど細かい疑問は山ほどある」っていう感じでしょうか…。
最初にも言ったとおり、コメントをいただければ皆様の状況にもなるべく頑張ってお答えいたしますのでぜひどうぞ!
- 「もっとこういう情報が欲しい」
- 「こういう書き方にして欲しい」
などもありましたらどしどしどぞ。
※こんなこと書いておいてあれですが、実際に皆様の車を僕の目で見ていない以上、予想外の例外によってお返事したコメントが間違っている可能性もゼロではありません。
自分が言うことに自信がないという意味ではなく、インターネット上のこのやり取りだけでは「保証」もしくは「補償」は一切できません、ということをどうかご了承いただきたく思っています。
それでは、長い記事をお読みいただきどうもありがとうございました!