今回は、「とりあえずカーナビはつけようと思っているけど、純正品か社外品のどっちがいいの?」という悩みにお答えしたいと思います。
まず、そもそもよく「純正品」と一口で呼んでいますが、その中でも「メーカーオプション」と「ディーラーオプション」という2つに分かれていることにも注意しておきたいです。
本記事では、この2つと社外ナビの比較をメインにしつつ、車の買い替え時にどういったことを考えれば良いかを少し提案してみたいと思います。
ちなみに、「自分の車に付いているナビが3つの内どのタイプなのか知りたい!」という方は以下の記事をご覧ください。
2つの「純正品」と社外品ナビ
まずはそれぞれのカーナビがどういうものかを確かめておきましょう。意外とここがピンと来ていない方も多いかもしれません。
メーカーオプションナビ
メーカーオプションナビとは、車の納車時(製造時)から既に取り付けられている純正ナビのことで、車種やメーカーの独特なシステム、機能、形状が盛り込まれているケースが多いです。
いくつか実物の例を見てみましょう。
現代で一番いい例でしょう、マツダ車に付く「マツダコネクト」。その評判に対する議論は今は置いておくとしても、「メーカーオプションのナビというのはまさにこういうものです」という説明に最もふさわしいナビシステムです。
見て分かる通り、通常のナビが収まる場所(DINポケット)などはそもそも存在しておらず、車と完全に一体化していますね。
こちらはトヨタの「T-Connectナビ」。縦型という特異な形状をしていて、やはりメーカーオプションの良い例と言えるでしょう(T-Connectという名称のディーラーオプション設定もあります)。
ホンダからは「インターナビ」という名前で同じ立ち位置のものが登場しています。こちらは割りと通常の形状をしていますね。しかしどちらも車体に嵌め込まれているような機構ではないところがポイントです(車のデザインに依存している)。
最後は輸入車としてAudiのA8を。自動運転とHMIで話題になったこの車ですが、写真を見ると、車とナビシステムである液晶画面類が一体化しているのがよく分かります。厳密なところでいうと輸入車でも「メーカーオプションナビ」という呼称を使うかは怪しいところですが、捉え方として間違ってはいないでしょう。
では、細かな特徴や比較内容はこのあとのトピックで説明するとして、大きなポイントをリストアップしておきます。
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イメージ的には、見た目や表面上の機能では高品質に感じられるが、ナビ性能はその限りではない、のように思っておくと良いでしょう。
上のアウディのように、ある程度高級な現行の輸入車ならそもそもこれ以外に選択肢がないという場合も往々にしてあります。
ディーラーオプションナビ
もうひとつの「純正品」であるディーラーオプションナビは、ディーラーで新規に契約をするときにオプションとして選べるタイプのナビです。多くの場合2~5種類ほどから好きなものを選ぶことができます。
あくまでも車としてはナビを取り付けるスペースを空っぽにした状態で(これを「オーディオレス」といいます)出荷するので、取り外し/付け替えは基本的に自由です。
以下、実物の例です。
先ほどと同じ「T-Connect」ですが、こちらはディーラーオプションナビver.です。一気に見た目が「普通のナビ」という感じになりましたね。しかし9インチモデルという、車種に合わせた大画面化もしっかり図られている製品です。
これはホンダの「Gathers」です。僕個人の体感としては付けている方がかなり多い印象ですが、ホンダ車オーナーの方、いかがですか?
上の「T-Connect」と同じような標準形状のまま車に嵌め込まれている様子が分かるでしょうか。これにより取り外し/付け替えが容易になっています。
ディーラーオプションナビも、大きなポイントだけ先に抑えておきましょう。
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ディーラーオプションは、メーカーオプションと社外品ナビのちょうど中間的な立ち位置、というそのままのイメージで良いでしょう。
実際のところどちらの特徴も併せ持っているような面があります。その辺りも後ろで取り上げます。
社外品ナビ
オートバックスやイエローハットなどのカー用品店、もしくはAmazonなどインターネットで単品購入できるのが社外品ナビです。
店舗で購入するときは相応の工賃を払うことで取り付けまでやってもらえますが、それなりの知識があれば個人でも十分に付け替えができます。
多くのラインナップから自分に合ったカーナビを選べるのが何よりの特徴で、性能も3種類のナビの中では最も高い傾向があります。
例えば以下のようなものがあります。
社外品カーナビの市場でほぼ一人勝ちしているパイオニアの「carrozzeria」ブランド、そのフラッグシップモデルである「サイバーナビ」です。地図の情報量の多さと現在位置測位精度が一番のウリですが、もとはスピーカーブランドということもあり音質にも定評があります。
こちらはcarrozzeriaに追従するケンウッドの「彩速ナビ」シリーズ。豊富な機能となによりその「動作の速さ」が素晴らしく、ストレスなくナビを操作できるその快適さにはファンも多いです。こちらもオーディオ製品メーカーということで音質にもこだわりが見られます。
では例によって、ここも大切なポイントだけ先に挙げておきます。
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こんなところでしょう。
自分で好きなものを選べる上に、純正品と同じグレードのもので比べると遥かに価格が低いのがポイントです。「納車前の車の見積もりと比較すると10万円以上差が出る」なんていうこともしょっちゅうです。僕はカーナビの販売側にいた経験がありますが、この事例をとにかくたくさん見てきています。
それと、下から2つめの「カーナビ本体以外に色々必要になるケーブル類などがある」という件はかなり注意が必要です。ここの知識を元から持っている方は相当少ないはずですし、ネットにもほとんど情報がありません。
そこで、「社外品ナビを買うときにカーナビ本体以外に必要になるもの」ということで、以下の記事にまとめています。社外品ナビを購入するつもりのある方は、ぜひ一度読んでおくことをおすすめいたします。
しかしこれを総合して計算しても、トータルでは純正品より遥かに安いというポテンシャルに相違はありませんのでご安心ください。
3種類のカーナビを比較する
さて、ではいよいよこの3種類のナビを横に並べて比較してみたいと思います。
細かい点も含め、以下の表にまとめてみました。有利と思われるものには青色を付けています。
項目 | メーカーオプション | ディーラーオプション | 社外品ナビ |
価格 | かなり高め。そもそもナビ単体でのオプション付加という形がない場合も多く、トータルコストは上がりやすい。 | こちらも高め。しかしメーカーオプションとは違ってナビ単体での購入ができることが多いので、社外品ナビとは比較しやすい。 | 3つの中では最もコストパフォマンスに優れている。同じ値段にお金を払った場合、性能が一番良いものが手に入れられる。 |
デザイン | 高品質。ナビというより車の一部という扱いなので違和感もない。 | 純正品の一部とは言え、ほとんど社外品ナビと同じレベルと言える。物によってはデザインの整合を保っているものもあり。 | 製品そのものに依存する。三菱のダイヤトーンサウンドナビのように、高級感ある秀逸なデザインのものもある。 |
地図、ナビ性能 | 基盤的な技術差というより、真新しい機能という面でフォローしているイメージ。性能レベルとしてはディーラーオプションと並ぶことも多々あり。 | メーカーオプションと同じく、車メーカー独自の通信機能などでカバーしている様子が見られるが、位置の捕捉精度や地図情報などはまずまず。 | 基礎的な性能差として、自分の位置が飛んだりしない正確な測位と豊富な地図情報量が魅力。ナビメーカー内でも非常に開きがある点は注意。 |
オーディオ機能 | - | オーディオの設定項目や、音質自体にもこだわりが強い。音楽重視の方はそれだけで社外品ナビをおすすめしたいです。 | |
拡張性 | 「車の一部である」ということが逆に仇となり、自分で好きなカスタマイズを後から施すには最も自由度が低い。USBケーブルを1本引き回すのにすらディーラーへ行く必要があることも。 | - | 好きなものを後天的にカスタマイズしていくのには最も向いている。ナビを取り外すことが自分でできれば、ETCやドラレコなど他の電装品をナビに接続することも比較的カンタン。 |
移植性 | その車で使えるのみ。 | 形状は社外品ナビと一緒でも、実は中の配線事情は随分違っているので、そのまま他の車には移植できないと思っておいたほうがいい。 | 車を乗り換えてもナビは移植できる。しかし、お店に頼んだ場合は取り外しと取り付けで2回分工賃を請求される場合がほとんどなので、実際はナビも買い換えるパターンが多い。 |
バックカメラとの連動 | 問題なく利用できる。多くの場合ナビとバックカメラがセットのオプションなどで契約しているはずなので、その場合はステアリングの切り具合に応じてモニター上の線も動く「ステアリング連動機能」も利用できる。 | 勘違いされやすいが、社外品ナビでもバックカメラは問題なく使える(バックカメラが純正でも社外品でも)し、駐車アシスト線も表示される。ステアリング連動線のみ表示されない。 | |
ステアリングとの連動 | ハンドルに音量調整や電話応答などのボタンが付いている場合、それらでナビを操作できる機能。こちらも勘違いされやすいが、社外品ナビでも問題なく利用できる(1,500円ほどのケーブルが必要になるケースあり)。 | ||
地図更新 | 購入から1~3年ほど無料というパターンが多い。地図代が高い金額に含まれているという考え方もできる。 | こちらも、各社フラッグシップモデルになると購入から1~3年ほど無料というパターンが意外とある。デンソーテンのイクリプスナビのように、地図更新を無料/自動でやってくれるモデルもある。 | |
保証期間 | 基本保証期間は3年。 | 基本保証期間は1年。販売店保証に別途加入すると5年保証などもある。 |
特筆すべきはルート案内と現在位置の測位精度の差で、あまり言いたくはありませんが、「ディーラーオプションの純正ナビを付けているけど役に立たなすぎて買い替えに来ました」というお客さんは正直後を絶たないレベルでいらっしゃいました。
あくまで「車の装備品のオプション」として作られているものと、「専業メーカーが作るカーナビ」とでは差があると言ったところでしょうか。
しかしもちろん、デザインや車とのリンクの強さなど圧倒的に純正品グループの方が勝る点があるのも事実ですね。
…で、「こんなにたくさん書き連ねられると逆に分からない!」という方のために、以下は大雑把な選び方の目安です。
それぞれのメリットとデメリットを自分に合わせて考えよう
やはりパッと見ではどの項目も一長一短という感じが否めませんが、自分の目的や考えを明確にするとかなり絞り込むことができます。
例えば、
とにかく精度の良い案内をしてほしい!
なら社外品ナビ一択でしょうし、
やっぱり車は内装のかっこよさが一番でしょ!
というお考えならメーカーオプションの純正が一番でしょう。
また、こういう意見もありそうです。
どっちに関してもそこまでこだわりはないし、たくさんあるのから選ぶのもめんどくさいや
ならディーラーオプションのナビがちょうどいいかもしれません。
個人的には選ぶ楽しさと諸々の便利さから社外品ナビを推したいところですが、高級車や輸入車を購入した場合はメーカーオプションをどっさり付けたいところです。笑
選び方のポイントは「車を選ぶ前」にあり!
タイトルにも書きましたが、本当に自分にあったナビを選びたいなら、それは既に車を選ぶ前から始まっていると言えます。
なぜなら、今までにも説明したとおりメーカーオプションナビはそもそも新車の納車以前にしか選択権がありませんし、選択肢がいくつか増えるとはいえディーラーオプションナビもだいたい同じような状況です。
フローチャート的には「高級車/輸入車かどうか」というところから始め、あとは上述の表を参考に決めていくと良いでしょう。
悪い例として、例えば「とにかく大きい画面がいい!」というところからスタートしてしまうと「じゃあ純正品ね」となってしまいますが、社外品ナビでも純正品と同じサイズの10インチモデルが用意されているナビもたくさんあります(特定の車種専用というケースが多いですが)。
また、極端な話になってしまいますが、輸入車など通常のナビの形をした部分がない車でも、社外品ナビを取り付けることができるパターンはけっこうあります。自分もお客さんとしてそういった方は何人かご対応させていただきました。
どうしても、という場合はお店の人に相談してみましょう(なるべく知識が深そうな人を探すといいですよ)。親身に乗ってくれますよ。
まとめ
結論として、
という風に締めくくりたいと思います。値段も安いですしね。
どうしても「次の車はドイツ車御三家だ!」などの場合はこの限りではありませんが、そういう場合はそもそもそういったインパネの内装を含めてその車が欲しいんですもんね。「無理やり社外品ナビをつけよう」というのはいささかズレていると言わざるを得ません。
最後になりますが、社外品ナビの選び方に関しては以下の記事に全てまとめてありますので、どうぞご覧くださいね。
それでは、ありがとうございました。