電子ドラム、見てるとめっちゃ欲しくなるじゃないですか? それ超分かります。こんな記事タイトルをでかでかと掲げている僕ですら新製品の発表とか見ると「今度こそ…」って思うもん。
でもね、電子ドラムを買うことだけは絶対におすすめしません。
欲しい理由、必要な目的は色々あると思いますが、その多くは僕も検討してきた道です。みなさんの気持ちは分かっているつもりです。
ドラムは絶対に生楽器を触ってほしいというのが僕の願いなので(特に初心者と中級者くらいまでの方)、ぜひ落ち着いて考えてほしいと思います。
それと喧嘩腰なタイトルだけど、決してこれは目を引く目的とかではなくて、僕と同じような後悔に苛まれる人が少しでも減ってほしいと思っての心からの意見です。アンチとかそういうのではありません。
この記事は「楽器」として電子ドラムを検討している人へ向けて「ちょっと待った」をかけたい趣旨であって、電子ドラムというもの自体への批判の意味合いは一切ありません。というか最近の商品は昔より全然すごくて感動するレベルです。
ゆえに「ライブ用でそもそも電子ドラムというもののみが必要」とかそういうケースに対しては全く異論を言うつもりはないです。
僕の今までの電子ドラム歴
これから書く3つの理由の説得力を少しでも上げるためにも、僕が今まで電子ドラムと触れ合ってきた経緯をお話しておきます。
YAMAHA DTXPLORERアップグレードセット
初めて買った電子ドラムはYAMAHAのエントリーモデルでした。
打楽器を始めて随分経ってからの購入で、4年位は持っていたのかな。
エントリーモデルというのもあって、パッドの材質と打感に対する音源のフィードバック感はお手軽っぽさが否めませんでした。
でも音源はかなりきれいで、音色のプリセットもかなり入っていて思ったより楽しんで使っていました。なによりこの安さでこのクオリティはコスパ的には◯という感じ。
ただし、ゴムパッドの安っぽさとリアリティのないバウンド感が決定的に気に入らなくて、結局使わなくなった。もちろん騒音/振動の件もあるんだけど、それはメインの話題なのであとで。
Roland TD25KV
そういうわけで、数年規模でお金を貯めて満を持して次に買ったのがRolandのV-Drums。しかも相当上のグレードです。30万円くらいしたかな?
前回のYAMAHAでの失態、つまり打感と騒音/振動の件が、Rolandのメッシュパッドなら一挙に解決するらしいと聞いて超期待しての購入でした。
結論は、
- 打感はアコースティック(生楽器)じゃない限り理想を求めるのは無理
- 騒音は相当なくなったと言えるが振動は全く変わらず、結局振動が音となるようなイメージなので住居問題は残る
という感じです。詳しくは後述します。
そうは言っても、さすがRolandというか音源は最高でした。SC-88Proを思い出すじゃないけど、電子音での感動みたいなものはたしかにありました。
より生演奏っぽく聞こえるような粋な機能もあって、スネアの叩く位置によって音色が変わったり(これはパッド単体をアップグレードすれば全てのたいこに適用できる)とかは良かったと思います。
のだけど、結局それが「電気で動くおもちゃ」という意識は最後まで抜けなくて、「楽器」を求めていた僕の希望に適うものではありませんでした。
PVとかを見るととても電子ドラムとは思えないような音に聞こえますが、逆に言うといつも良い音しか出ないことにすごい違和感があったんですよね。っていうかあのPVは本当に電子ドラムの音なんですか?
ちょっと尻切れが悪いですが、あまり深入りしないうちに3つの理由の説明に入ります。
1.全く楽器を演奏している感覚がない
主に「打感」の話です。
打感とは実際に叩いたときの手や腕が感じる感覚のことを言っていて、要はリアルじゃないんです。
たいこに貼ってあるヘッドには固いとも柔らかいとも言えないあの独特さがあって、そもそもチューニングでも貼り具合は変わります。
メッシュは貼り具合を調節できたりもするけどそれも"表面的な細工"に過ぎなくて、決して楽器の生きている部分を表現できるものではありません。
スティックから返ってくる反応と聞こえてくる音色を常に頼りにしながら演奏を続けるのが打楽器ですが、返ってくる反応はいつも同じで、ひどく無機質な感覚が常につきまといます。しかも、お察しの通り聞こえてくる音色も基本的には全て同じということで、ここは全滅です。
ゴムパッドが楽器とは程遠いことはみなさんも想像できるでしょうが、それが調整可能なメッシュパッドになったからといって限りなく生楽器に近づくかといったらそんなことは一切ありません。
スネアの表ヘッドをあんなにポンポン跳ね返るくらい張るチューニングは、少なくとも実用的とは言えないでしょう。タム類はなおさら。
また、たいこ以外も例外ではないです。
シンバル類は基本的に各メーカーのフラッグシップモデルでもゴムベースの材質です。
ハイハットならスティックが沈むこむあの感覚が近いと言えなくもないですが、他のシンバル系は、当然本物と厚さも重みも違うことになるので全く意図したフィードバックが得られません。不自然さが残ります。
ちなみに、バスドラムの打感自体だけは特に不満を思ったことはありません(ツーバスとかやるなら話は別)。
というわけで、楽器の感覚がある人ほど、
なんで楽器の練習をしたいのに楽器を叩いていないんだ…?
みたいな疑念に駆られ続けることになります。叩く気がなくなっちゃいます。
2.出る音がきれいすぎるんだけど…。「違う音色はどうやって出すの?」
さっき「スティックから返ってくる反応と聞こえてくる音色」という言い回しをしましたが、2つめの理由は後者の「音色」の部分にフォーカスした話です。
叩いたときの感覚が違うのに加えて、自分が予想した音と違う音まで聞こえてくるともう絶望的です。本当に違和感しかないという感じです。
ドラムの醍醐味って細かいニュアンスで歌えるところにあると思うんだけど、スネア1つとってみてもその辺は全くだめという感じです。「じゃあ違うリムショットはどうやって出すのよ!?」みたいな展開になります。
シンバルなんてただでさえ同じ製品でも死ぬほど音のバリエーションが広いくらいなのに、叩く度に毎回同じシンバルの音が聞こえてくるなんていうのはもう正直僕は耐えられないレベルでした。
ドラムの導入として電子ドラムを考えている方は要注意
そして、そもそも自分が出したい音が一体どんな音だったのかその確認すらできないというのは練習という観点からするとスーパー逆効果です。
で、初心者さんであるほど注意してほしいのはこの部分です。
自分がどんな叩き方をしようがいつもいい音が聞こえてくる、こんなにおぞましいことはありません。ぶっちぎりかつ最速でヘタクソになります。
ドラムを始めようと思っているから電子ドラムを買いたい
という思考は最も危険なので気をつけてほしいと思います。ドラムに限らず電子楽器は全部当てはまるけど。
家に置いて色んな問題に悩みながら電子ドラムを叩き続けるより、スタジオに通うかレッスンに通うかする方が何十倍も得られるものは大きいです。他にも良い経験がいっぱいありますしね!
ドラムならではの物理的な練習が目的なら
補足です。
- ドラムの譜読みに使いたい
- 手順、足順の確認に使いたい
という目的が強い方は、素直に身の回りのものをうまく設置して運用するほうがずっと良いと思います。
音を出さないで、打感も譜読みのためと割り切って使うのもありですが、それに何十万も出しますか?
3.騒音と振動は想像している以上に大きい
電子ドラムを買うにあたって一番最初に気になるのはたぶんこれでしょう。「なんとかなるだろ!」ってなりがちですが、なんとかならせるのは相当大変です。
「楽器の音自体が出ない」もしくは「音量調節ができる」というのはその通りですが、
- 物理的な打音
- 打撃による振動
の2つは絶対に無にはできません。
お店で触ってみたところでこれらは全く体感できませんが、いざ家に設置して叩いてみたら愕然とすると思います(モデルや家によるのでパターンはピンキリだけど)。
打音自体はメッシュパッドでかなり軽減されますし、そもそも伝播して響きやすいものではないので同居人の理解が得られればさほど問題はないのだけど、振動はそうはいかないです。
モノを叩く振動は想像以上に床から壁、隣の部屋や階下に響きます。振動というよりこれが騒音だと思ったほうがイメージ的にはいいと思います。
バスドラのキックとか、相当下に響きます。
対策もある
僕も防音対策に関してはYAMAHAの電子ドラム時代から度々調査を重ねていて、ホームセンターに足繁く通い、色々実験しまくって試しましたが、最終的には電子ドラムを手放す決断の方が早かったです。
今でも単なる練習台を使うときですら、そのときに作った「オリジナル防音/防振パッド」を下に置いています。
この層構造と材質、その順番にもちゃんと意味があります(覚えてない
追記 (2019/11/24) :昔書いた構造のメモが出てきたので掲載しておきます。意味は僕ももう分からない
一番表面には柔らかいもの 防音カーペットやコルクマット 次にP防振マット フレーク状のゴムの間に小さなすき間があり 吸音材のように衝撃音を吸収する 下にウレタンマットを敷く
防振材は遮音材の内側に入れる
この練習パッドはメッシュ製で確かに静音性は優れていますが、床下への共振はかなりあります。このサイズでです。
「本気で防音/防振対策の施行をすればなんとかなりそうだ」とは今なら思えますが、そこにお金と労力をかけることが、電子ドラムを欲しい人全員にできるでしょうか?
ちなみに「他人なんか気にしねぇ」ってのは断じて許しません。余計電子ドラム(もしくはドラムや打楽器奏者全員)への風当たりが強くなっちゃうからね!
ただし例外として、
- 一軒家で同居人の理解がある場合
- 相当広いマンションの1階に住んでいる
などの場合はちょっとだけ有利かも。
ただし注意してほしいのは、振動は下のフロアばかりを気にしてしまうと思いますが、両サイド(壁)にもかなり聞こえますので安心は禁物。
まあ環境問題は千差万別なので、全く該当しないっていう人もいるでしょう。 でもそれなら生ドラムを買うはずです。
電子ドラムを検討しているってことは、少なからず「普通のドラムよりうるさくない」ことに期待していると思われますが、普通の家で普通に使うのはほぼ無理くらいに思っておいたほうが無難です。 隣人トラブルで殺されてもおもしろくないですからね。
それでも、買います?
電子ドラムが刺激してくる物欲の強さはよーーく分かります。最初にも言ったとおり今でも欲しくなります。笑 かっこいいし。
でも、買ってから
本当に買ってよかったー!
って思えるパターンはごく少数に限られていると思います。
いや、そう思う人もいるのかもしれませんが、初心者さんの件じゃないけど自分が練習という意味ではかなりまずい方に向かっていることにすら気付けないのだとしたら、さらにやっかいです。
ただ単にドラムっぽいもので遊びたいことが目的ならもちろんアリだと思います。というか最高のオモチャです。
今電子ドラムを買ってみようか迷っている人(=この記事に辿り着いている人だと思いますが)は、その購入検討が単なる物欲で始まっているものじゃないかをもう一度よく振り返ってみてください。
「なんとなく欲しいかもと思ってから色々調べているうちにどんどん好きになっていっちゃう現象」は購買行動あるあるですが「恋は盲目」となんら変わりありません。
悪いところには目が行きにくくなるものだから、この記事をここまで読んでいただけたあなただけは、もう一回よく考えてほしいなあと思います。後悔してほしくないんです。ドラムから離れていってほしくないんです。
実は冒頭の電子ドラム歴紹介のところで超大事なことをさらっと話していたんですが、そもそも「楽器」を求めて電子ドラムを検討している人は100%買わない方がいいです。
逆に、あくまでも機械製品であることをちゃんと理解できていて、使用用途も目的も明確になっている場合は購入が成功となると思います。
でも、心のどこかでは「家でドラム叩きたいなあ」という思いがあるから電子ドラムを考えているんでしょうから、頭だけじゃなくて本当に心で理解するのは難しいんじゃないでしょうか。
本当にドラムを叩きたいなら、まずは自分の大好きなスネアを探して、たいこを1つでもいいから買ってみることとかが大切だと思います。
あとがき
とっっっっても言いにくいのですが、この記事を書こうと思った理由は「久しぶりに電子ドラムを見たら"やっぱいいかもな"とか思ってしまった」からなんです。
しかしそこで我に返る。
「もうあの過ちを犯してはならない」と思い起こし、自分への戒めも兼ねて記事を書こうと思ったんです。もちろん何度も言っているように、多くの人を後悔から救いたい気持ちがメインですが。
でも今は
- 無駄に家のスペースが余っている
- 騒音もわりと気にしなくていい状況
- 昔よりお金もある
でパッと見の条件は最高なんですよね~
1年くらい前から生ドラムの購入計画を考えていたけど、やっぱり家で叩きたいですよね。まあまた色々考えてそれも記事にしようと思います。
最後になりますが、否定的な意見を強く主張したのでご意見ご感想もぜひお聞きしたいです!コメントお待ちしています。
それではまた!
この記事へのコメント
生ドラムも電子ドラムも最高のオモチャですね。電子ドラムの使用機会の方が多い場合、電子ドラムなりの表現力が上手くなり、生ドラムに違和感を持つのではないでしょうか。電子ドラム=生ドラムの練習機 と考えるには電子ドラムのポテンシャルがもったいない気がします。電子ドラムをやりたい、と言う選択肢も昨今ではアリではないかと思います。何かの代替えではなく、表現するツールの一つと考えても良いのではないでしょうか。
コメントありがとうございます。
なるほど、電子ドラムもひとつの立派な表現方法であるということですね。たしかにそうかもしれません。「生ドラムの代替でしかない」というのは前提に思っていたというより実は固定観念に縛られていたのかもしれないですね。
とても建設的な議論ができそうなコメント、嬉しく思います。
ただしそうなると、なおさら生ドラムとの区別はしっかりと理解しておく必要がありそうですね。ある意味「叩き分け」ということで上級者向けと言えるのかも。
じゃあ家で何したらいいの?
こんにちは!
僕なら家での練習は各種基礎練習とルーディメンツなどの時間に充てますね!
記事内でも言いましたが、「譜読み」という意味での身体を動かす練習ならやってもいいと思うんですが「アコースティック楽器の練習」という意味ではやらない方がいいと思います。実際に楽器を触れる環境を用意するのが結果的に一番近道かなーと。
主さんが買った電子ドラムがあまりいいものじゃないんですよね…正直TDシリーズは音源モジュールとセンサー以外はあまりいいとは言えません。VADシリーズやPLAYTECHのPDS-750、1000を触ってみれば電子ドラムへの見方も変わると思いますよ。
うーんなるほど、それはそうな気がしますね。笑
すべての電子ドラムを触ったわけではないのにここまでの主張をしていればそりゃこう思われるだろうなーと思いました(お店での試打経験くらいはありますが)。
なので電子ドラム自体の評価はまだ変わる可能性はたしかにあるんですが、根本のこと(振動etc...)による結論はやっぱり変わらないだろうなーと思ってます。
ご意見ありがとうございました!
比較的好きな時に生ドラムを叩ける環境がある人の考え方ですね
いえ、そんなことないですよ。
自分は(個人では)全く叩く機会はありませんでした。
それらまで含めて天秤にかけたとしてもこの記事の意見です、という意味合いです。
そもそも楽器って趣味で始めるもんなんだから、手軽にドラム叩けて楽しめるほうが絶対に重要。
だから家からスタジオまで距離ある人は電子ドラムで全然いい。家でパッドの基礎練しなくて退屈だからドラムやめるっていう人が増えるより全然いい。
もちろんドラムで生活していくとなったら話は変わるけど、そんなの全体の何割なのって話。
上達することにフォーカスが行き過ぎて、そもそも演奏する楽しさがすっぽ抜けてる。部活かよ。
「生ドラムと電子ドラムの比較、生ドラムの利点」とかのタイトルなら理解できるけど絶対買わない方いい理由というタイトルは全く共感できない。
ありがとうございます!
おっしゃることはよく分かりますよ~
いただいたコメント自体にも全部同意です。
たしかにタイトルは挑戦的にはなっちゃってますが、あくまでも個人の考えとして「そういうのもあるんだろうね」くらいでお読みいただけないでしょうか?
そこまで考慮した上で自分は今この結論です、という話でした。
こんばんは。
自分は結構同意でした。
練習って観点だと
少なくともシンバルとスネアは
生でやりたいのはわかります。
でも先日tm-6買っちゃいました。
エレドラ楽しいのでモチベーション
上げる意味では良いかもw
あと、シンバルはgen16使ってるので
これはいいかも。
スネアにrt-micsと
生スネアを上手いこと
消音できたら
凄くベストな環境できそうかな
っとも思ってます。
では
ご意見ありがとうございます!
そうですね、なにも「電子ドラムか生ドラムか」の二者択一にするのではなく、両者をミックスすることに情熱を費やす方向性もありですよね。
たしかに自分も優先度が高いのは 1.スネア 2.シンバル かなーと思います。ハイハットもかなー、難しいな。